介護施設の緊急時フローチャートとAI活用法
こんにちは。介護AI戦略室運営者の「taka care」です。
介護施設で働いていると、「もし今、利用者さんが急変したら、私は何をすればいいんだろう」と不安になる瞬間がありますよね。特に夜間や休日は職員数が少なく、管理者や看護職員にすぐ連絡できないこともあります。
そこで重要になるのが、介護施設の緊急時フローチャートです。事故や急変が起きたときの初動、緊急連絡網、119番通報、救急搬送の判断、家族への連絡、救急医療情報シートの活用まで、あらかじめ「誰が・いつ・何をするのか」を決めておくことで、現場の迷いやパニックを最小限に抑えられます。
さらに私は、これからの介護現場では、こうした緊急時対応にもAI・ICT・DXを組み合わせることが不可欠だと考えています。フローチャートを紙で作ってファイリングして終わりにするのではなく、AIを使ってマニュアルを瞬時に検索できるようにしたり、記録の負担を減らしたりすることで、職員が本来向き合うべき「利用者支援」に時間を戻せるからです。
この記事では、介護現場で20年以上働き、ショートステイ管理者、事務長、全国70施設の経営管理、行政手続き支援などを経験してきた私の視点から、介護施設の緊急時フローチャートを「実務で本当に使える形」に落とし込む方法を解説します。
- 事故・急変時の初動から救急隊への引き継ぎまでの正しい流れ
- 救急搬送の判断基準と、119番通報で的確に伝えるべき情報
- 救急医療情報シートやDNARに関するトラブル防止策
- 災害・感染症BCPと連動した緊急連絡体制の構築
- AI・ICT・DXで緊急対応と介護業務を劇的に効率化する方法
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介護施設の緊急時対応フローチャートの作り方

緊急時は「誰が・いつ・何をするか」の
役割分担が利用者の命を繋ぎます
まずは、利用者の急変や事故が発生したときに、現場職員がどのように動けばよいのかを整理します。緊急時は一つひとつの判断に時間をかける余裕がありません。だからこそ、発見者、応援職員、看護職員、管理者、家族、医療機関それぞれの役割を平常時から決めておくことが重要です。
単に「救急車を呼びましょう」という話ではなく、発見した瞬間から救急隊へ情報を引き継ぐまでを一つの流れとして構築します。実際の現場では、緊急時の対応そのものと同じくらい、「情報を正確に次の人へ渡すこと」が生命線になります。
緊急時対応と急変時の初動手順
事故や急変を発見したとき、最初に徹底すべきは「慌てて一人で抱え込まない」ことです。
発見者は利用者の状態と周囲の安全を確認しながら、まず大きな声やナースコール等で応援を呼びます。発見者がその場を離れてしまうと、状態の急変を見逃したり、後から来た職員が「何が起きたのか」を正確に把握できなかったりするためです。
例えば転倒を発見した場合、すぐに利用者を抱き起こそうとするのではなく、意識や呼吸、出血の有無、痛みの訴えなどを確認し、必要に応じて看護職員や管理者へ連絡します。頭部を打った可能性がある場合などは、本人が「大丈夫」と話していても、その場だけで判断してしまわないことが重要です。
応援が集まったら、すぐに役割を分担します。「119番通報」「応急対応(バイタル測定・止血など)」「看護職員・管理者への報告」「家族への第一報」「救急医療情報シートの準備」などです。
緊急時の基本は「発見・応援・評価・役割分担・連絡・記録」です。
誰か一人がすべてを背負うのではなく、複数の職員で同時並行に対応できる仕組みをフローチャート化しておきましょう。
意識がない、呼吸が苦しそう、窒息、大量出血、止まらないけいれんなど、生命に関わる可能性が高い状態では、管理者やオンコール看護師の指示を待つことよりも、119番通報を優先すべきケースがあります。
介護職員は医療職ではありません。だからこそ、「自分で診断する」のではなく、「異変を発見し、必要な情報を整理し、適切な医療機関や専門職に一刻も早くつなぐ」という役割を明確にすることが大切です。
また、急変時には必ず「時系列の記録」を残します。「14:20 むせ込み確認」「14:23 看護師へ報告」「14:25 SpO2測定」「14:30 救急要請」といった事実の記録は、後日の検証や、実地指導(運営指導)・監査の際にも極めて重要な証拠となります。
緊急連絡フローチャートと119番通報のコツ
緊急時に「誰に連絡すればいいのか分からない」「電話がつながらない」という状態が一番の恐怖です。
緊急連絡フローチャートには、通常時の連絡先だけでなく「連絡がつかなかった場合のバックアップ」まで明記する必要があります。例えば、「①夜勤リーダー → ②オンコール看護師 → ③管理者 → ④法人本部」といった具合です。
「看護職員に電話する」と書いてあっても、当日の担当者が分からなければ意味がありません。担当者名、連絡先、代替連絡先をリアルタイムで更新し続ける仕組みが必要です。
119番通報では、通信指令員に対して以下の情報を簡潔に伝えます。
- 施設名、住所、電話番号
- 利用者の年齢・性別
- 現在の状態(意識・呼吸の有無)
- 発症・受傷の時刻と状況
- 持病、かかりつけ医、服薬状況
- 施設で行っている応急処置
ただし、「すべての情報を完璧に集めてから通報する」必要はありません。緊急度が高い場合は即座に通報し、電話口での指令員の指示(口頭指導)に従いながら対応を進めてください。
家族への連絡の鉄則
家族への連絡では、確認できた事実と推測を明確に分けます。「たぶん大丈夫です」「骨折ではないと思います」といった憶測は避け、発生時刻、現在の状態、救急要請の有無など「確定している事実のみ」を誠実に伝えましょう。
救急搬送の判断基準とバイタルサインの確認
現場職員にとって「救急車を呼ぶべきか」の判断は非常にプレッシャーがかかります。
迷った場合は、総務省消防庁が公開している救急受診ガイドなどを参考にしつつ、「命に関わる危険があるか」「後遺症につながる恐れがあるか」「施設内だけで安全を確保できる状態か」を基準に考えます。
バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、体温、SpO2、意識レベル)の確認は必須ですが、数値だけで機械的に判断するのは危険です。高齢者の場合は普段のベースライン(平常時の数値)との「差」が重要になります。普段血圧が高い人が急激に低下している場合などは、重大なサインかもしれません。
「朝からぼんやりしている」「いつもより食事量が極端に少ない」といった、数値には表れない「いつもと違う(something wrong)」という介護職員の直感も、医療職へ報告する際の強力な判断材料になります。
※バイタルサインの正常値や救急要請の判断基準は一般的な目安です。実際の対応は、施設の緊急時マニュアル、かかりつけ医・嘱託医、および地域の消防機関の最新の指示に従ってください。
救急医療情報シートと緊急連絡票の運用
救急隊が到着した際、スムーズな引き継ぎを可能にするのが「救急医療情報シート」です。
氏名、生年月日、既往歴、常用薬、アレルギー、かかりつけ医、DNAR(心肺蘇生を行わない指示)の有無、家族の連絡先などをまとめたシートを平常時から準備しておき、急変時には「今回の状況(発生時刻・バイタル・処置内容)」を追記して救急隊に渡します。
最大の注意点は「情報が最新にアップデートされているか」です。
半年前に変更された薬の情報が残っていると、かえって医療事故を誘発しかねません。毎月のモニタリング時などに、必ず情報シートを更新する責任者とルールを決めておくことが、本物のフローチャート運用です。
DNARと看取り対応におけるトラブル対策
緊急時対応で近年トラブルになりやすいのが、DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)に関する認識のズレです。
DNARは「心肺停止時に心肺蘇生(胸骨圧迫や人工呼吸)を行わない」という取り決めですが、これを「一切の医療行為や救急搬送を行わない(見捨てる)」と拡大解釈してしまうのは極めて危険です。誤嚥による窒息や転倒による骨折など、原因を除去・治療可能な急性疾患に対しては、救急要請が必要になるケースが多々あります。
本人の意思、家族の意向、主治医の判断、施設の看取り指針を文書(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)として残し、夜勤職員も含めた全スタッフが即座に確認できる場所に保管・共有しておくことが、ご本人と職員を守る最大の盾になります。
災害・感染症対応と緊急時フローチャートの拡張

急変時だけでなく、災害や感染症を
想定したBCPとの連動が不可欠です
緊急事態は、利用者の急変だけではありません。地震や水害、火災、そして感染症のアウトブレイクなど、施設全体を巻き込む事態(BCP:業務継続計画の発動)も想定する必要があります。
災害BCPと火災時の避難対応フロー
災害時には、利用者と職員の安全確保を最優先としつつ、介護サービスをいかに継続するかが問われます。
BCPの発動基準、指揮命令系統、安否確認の方法、備蓄品の管理などを定めますが、分厚いマニュアルは緊急時には読めません。「地震発生時、最初の10分間で誰が何をするか」に特化した1枚のアクションカード(フローチャート)を各フロアに掲示しておくことを強く推奨します。
また、通信インフラがダウンした状況を想定し、LINEなどのSNS、災害用伝言ダイヤル、ビジネスチャットツールなど、複数の連絡手段を確保しておくことも重要です。
感染症と防犯の緊急時対応
新型コロナウイルスやノロウイルス、インフルエンザなどの感染症が疑われる利用者が発生した場合のフローチャートも必須です。
「居室隔離の判断」「ゾーニング(汚染エリアと清潔エリアの区分)」「防護服の着用」「保健所・協力医療機関への通報」といった初動対応を迅速に行うことで、施設内パンデミックを防ぎます。これも、発生してから考えるのではなく、「発熱者発見時フローチャート」として事前に整備しておきます。
ヒヤリハットを事故防止に活かす方法
重大な事故(緊急事態)を防ぐ最良の方法は、その手前にある「ヒヤリハット(ハインリッヒの法則)」の段階で芽を摘むことです。
しかし、ヒヤリハット報告書が「犯人探し」や「反省文」になってしまうと、職員は報告を隠すようになります。「報告してくれてありがとう。仕組みのどこに欠陥があったか一緒に考えよう」という心理的安全性の高い組織文化を作ることが、究極の事故防止策です。
緊急時対応をAI・ICT・DXで効率化する実践法

AIやICTを活用し、マニュアル検索や
記録業務の負担を大幅に削減します
ここまで様々なフローチャートやマニュアルの重要性を説いてきましたが、人間の記憶や根性だけで全てを完璧に運用するのは不可能です。
だからこそ、私は「職員が人にしかできない仕事(ケア)へ集中するためにAIやICTを使う」ことを提唱しています。
AI検索で「迷う時間」をゼロにする
分厚いマニュアルの最大の弱点は「探すのに時間がかかること」です。
施設内の緊急時マニュアルやBCPをデジタル化し、セキュアな環境下でAIチャットボットに読み込ませておけば、スマートフォンから「夜間に転倒、意識あり、出血なし。次の手順は?」と入力するだけで、即座に施設指定のフローチャートを提示してくれます。
記録・情報共有をICTで劇的に効率化
事故報告書やヒヤリハットの作成、急変時の時系列記録、申し送りなど、介護現場は「文字を書く作業」に溢れています。
スマートフォンの音声入力を活用した介護ソフトや、事実を箇条書きにするだけで適切な文章に整えてくれる生成AIを活用することで、記録にかかる時間を劇的に削減できます。浮いた時間は、利用者への見守りやケアに直接還元できます。
| 業務 | AI・ICT活用の例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 緊急時マニュアル | AIによるQ&A・検索システムの構築 | 必要な情報を探す時間・パニックの削減 |
| 事故・ヒヤリ報告 | 音声入力やAIによる文章の構造化・要約 | 記録作成の心理的・時間的負担の軽減 |
| 緊急連絡網 | クラウド型連絡ツール(ビジネスチャット等) | 一斉送信、既読確認、最新情報の自動同期 |
| データ分析 | 蓄積されたヒヤリハットの傾向をAIで分析 | 時間帯や場所の偏りを可視化し、事故を未然に防ぐ |
介護DXは「システム導入」だけではありません
ここまでAIやICTの活用について解説してきましたが、施設運営のコストを考えるなら、システム導入だけでなく「毎月発生している固定費」を見直すことも重要です。
特に介護施設では、照明、空調、厨房設備、ナースコール、介護機器など、日常的に多くの電力を使用します。「業務効率化には取り組んでいるけれど、電気代は以前からほとんど見直していない」という事業所もあるかもしれません。
そこで、一定規模以上の施設であれば、高圧電力の契約内容を見直してみるのも一つの方法です。
「介護でんきナビ」では、介護・福祉施設向けに高圧電気プランの見直しを案内しています。
AI・ICTによる業務効率化と合わせて、毎月の固定費も一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
▶ 高圧電気の見直しはおまかせ!【介護でんきナビ】 で電気代を見直してみる
AI導入時の注意点(個人情報の保護)
利用者の氏名や病歴などを含む個人情報を、無料の一般的な生成AIに直接入力することは絶対に避けてください。AIを活用する際は、入力データを学習に利用しない設定(オプトアウト)にするか、法人向けの高セキュリティなAI環境を構築する、あるいは個人を特定できないよう匿名化するルールを必ず設けてください。
また、AIが提示した内容はあくまで「下書き」や「参考情報」です。最終的な状況判断や医療機関への連絡は、必ず人間の職員(専門職)が行うことが大前提です。
まとめ:フローチャートとAIで「職員が安心できる現場」を作る

フローチャートとAIの導入で、職員が安心して
本来のケアに集中できる環境を作りましょう
介護施設の緊急時フローチャートは、単に壁に貼っておくための紙切れではありません。
「経験の浅い新人職員や夜勤者でも、それを見れば適切な初動が取れる仕組み」であり、利用者の命と職員の心を守るための命綱です。
緊急時対応を強固にする3つのステップ
- 明確化: 誰が、いつ、何をするかをフローチャートに落とし込む
- 最適化: AIやICTを活用し、情報検索や記録の負担を徹底的に省く
- 習慣化: 定期的な訓練とアップデートを行い、形骸化を防ぐ
介護DXの目的は「AIに仕事を奪わせること」ではなく、「AIにできる仕事(整理・検索・定型文作成)を任せ、人にしかできないケアや判断に、人の力を集中させること」です。
記録や間接業務の負担を減らすことは、職員のストレスを軽減し、離職防止にも直結します。ぜひ、あなたの施設の緊急時フローチャートを見直し、一部からでもデジタル化・AI活用を進めてみてください。
参考資料(公的機関の一次情報)
本記事の作成にあたり、基準や制度の基礎となる以下の公的情報を参照しています。緊急時の対応や判断については、各自治体および消防機関の最新情報をご確認ください。
- 総務省消防庁:救急車利用マニュアル・救急受診ガイド
- 厚生労働省:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修
※上記リンク先は公式ページです。実際の急変時・災害時の対応は、利用者の状態に応じ、主治医や救急隊の指示を優先してください。

