特養の通院介助は「義務」なのか?元介護事業所管理者が教える制度の境界線と費用の正解

特養の通院介助について相談する家族と職員、背後に効率化を象徴するAIのイメージ 有料老人ホーム (介護付・住宅型)
介護AI戦略室:イメージ

特養の通院介助は「義務」なのか?元介護事業所管理者が教える制度の境界線と費用の正解

「特養に入れたら、病院の送迎や付き添いも全部やってもらえると思っていたのに……」

「特養 通院介助 義務」と検索されたあなたは、施設側から「ご家族で対応してください」と言われ、戸惑いや憤りを感じているのではないでしょうか。もしくは、現場職員として「どこまで対応すべきか」の判断に迷っているかもしれません。

元介護事業所管理者として、現場の苦しい実情を正直にお話しします。かつては職員の「善意」で回っていた通院介助が、今、深刻な人手不足によって崩壊しつつあります。本記事では、曖昧になりがちな「法律上の義務」「費用の負担者」を明確にし、さらにAI(人工知能)を活用してこの危機を乗り越えようとする最新の現場事例について解説します。

1. 【結論】特養の通院介助は「完全な義務」ではない

特養の基本サービス(施設内生活)と、対象外になりやすい外部通院の範囲を示す図解

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制度と現場のギャップを整理する

まず、最も重要な「義務かどうか」という点についてです。結論から言えば、「特養がすべての通院・送迎・付き添いを行う法的義務」は明記されていません。

多くのご家族が誤解されているポイントを、制度(建前)と実態(本音)で比較しました。

項目 ご家族の期待 制度・法律上の解釈
通院の付き添い 施設職員がやってくれるはず 生活介護が主であり、外部医療機関への付き添いは基本サービスに含まれない(協力医療機関等は除く)。
送迎車両 施設の車で送ってくれるはず 介護保険上の義務規定はない。介護タクシー等の利用が原則となる場合が多い。

※出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」より解釈

特養はあくまで「生活の場(終の住処)」であり、病院ではありません。日常的な健康管理は配置医(嘱託医)が行いますが、専門的な治療が必要な場合の「通院」は、施設サービスの枠外となるケースが多いのです。

なぜ「昔はやってくれた」のか?

「前の入居者はやってくれていたのに」という声もよく聞きます。これは、かつて人手に余裕があった時代に、施設側が「サービス(善意)」として行っていた慣習が残っているためです。しかし、今の介護現場において、職員1人が半日抜けて通院に付き添うことは、フロアに残された入居者の安全リスク(転倒や誤嚥など)に直結します。

2. 「誰が払う?」通院にかかる費用と役割分担

特養入居者の通院手段(家族・介護タクシー・民間代行)と費用のイメージ

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選択肢は3つ:誰が連れて行くのか

では、具体的に誰が対応するのでしょうか。大きく分けて3つのパターンがあります。

  1. 家族対応: 最も一般的。費用は交通費のみ。
  2. 介護タクシー(家族同乗なし): ドライバーが院内介助を行う場合もあるが、予約が取りにくく、費用がかかる。
  3. 代行サービス(自費): 1時間3,000円〜5,000円程度の民間サービスを利用する。

費用負担の考え方

ここでトラブルになりやすいのが費用です。原則として、通院にかかる交通費や外部の付き添い費用は「自己負担(入居者・家族持ち)」となります。

厚生労働省の資料においても、介護保険施設入所中の通院移送について、特別な事情がない限り、通所介護等の他サービスを併用することはできないとされています(出典:厚生労働省「介護輸送に係る法的取扱いについて」)。つまり、施設の職員が対応できない場合は、全額自費での対応を求められることが一般的です。

3. 現場を救う「AI活用」という新たな選択肢

AIでスケジュールを最適化し、入居者と向き合う時間を創出した介護現場

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ここまで読むと、「結局、家族が負担するしかないのか」と暗い気持ちになるかもしれません。しかし、私たち現場もただ手をこまねいているわけではありません。「AI(人工知能)」を活用して業務時間を削減し、その分を通院対応やケアに充てようとする動きが始まっています。

AIができること・削減できた時間

私が管理していた事業所では、通院調整や記録業務にAIを導入しました。その結果、劇的な変化が生まれました。

  • 通院スケジュールの最適化: 複数の入居者の受診日をAIが分析し、同じ病院・同じ曜日にまとめることで、送迎回数を削減。
  • 情報共有の自動化: 医師への提供資料作成や家族への報告メールをAIが下書き。管理者の事務作業が月約27時間削減されました。

AIがもたらす「人間らしい」解決策

「AIに介護なんてできるのか」と思われるかもしれません。しかし、AIは冷たい機械的な対応をするためのものではありません。「事務作業」をAIに任せることで、職員が「人」に向き合う時間を取り戻すためのツールなのです。

実際、事務作業が減ったことで、「緊急性が高く、家族も来られない」というギリギリのケースにおいて、職員が付き添える余裕が生まれた事例もありました。すべてをAIが解決するわけではありませんが、AIと人が役割分担をすることで、制度の隙間を埋める努力が現場では進んでいます。

まとめ:対立ではなく「協働」へ

入居者を支えるために手を取り合う家族・施設職員と、それを支えるテクノロジーの象徴

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特養の通院介助問題は、「義務か義務じゃないか」で争っても解決しません。制度の限界を知り、その上で「どうすれば入居者様にとってベストか」を家族と施設が話し合う必要があります。

  • 制度: 特養の通院介助は法的義務ではない。
  • 費用: 外部サービス利用時は自己負担が基本。
  • 未来: AI活用などで業務を効率化し、少しでも柔軟な対応ができるよう現場は改革を進めている。

もし、通院のことで悩まれたら、まずは施設の相談員に「制度上のルール」と「施設の現状」を冷静に聞いてみてください。そして、施設側も「できません」の一点張りではなく、AI活用などの業務改善を通じて、少しでも家族の不安に寄り添う姿勢が求められています。

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