特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 開設ガイド(完全版)
元管理者の視点で、人員基準・設備・費用・開設手順・補助金・運営の実務ポイントまで徹底解説します。
結論:特別養護老人ホームはこんな方におすすめ
- 社会福祉法人として地域に根ざした高齢者福祉事業を展開したい方
- 重度要介護者を対象にした長期入所サービスを提供したい方
- 自治体との協働で介護基盤整備に取り組みたい方
開設に必要な要件(人員・設備・法人要件)
人員基準
- 施設長(管理者):常勤1名(原則、専従)
- 生活相談員:常勤1名以上
- 介護職員:入居者数に応じて3:1以上の配置
- 看護職員:入居者数に応じて配置(常勤1名以上必須)
- 機能訓練指導員:理学療法士・作業療法士・看護職員など
- 計画作成担当者(ケアマネ):常勤1名以上
- 栄養士:1名以上
設備基準
- 居室:個室が基本(1室あたり10㎡以上、従来型は4人部屋まで可)
- 食堂・機能訓練室・談話室
- 浴室(一般浴・特殊浴槽)
- 医務室・処置室
- トイレ(バリアフリー設計)
- 事務室・相談室
- スプリンクラー・非常用設備
法人・許認可
- 法人格:社会福祉法人(原則)
- 設置許可:都道府県知事の認可(設立認可+施設整備計画)
- 必要書類例:
- 定款・登記事項証明書
- 施設整備計画書・収支予算書
- 建物の設計図・設備概要書
- 管理者・職員の資格証明書
- 消防法・建築基準法関係書類
開設にかかる費用イメージ
初期費用(目安)
- 建設費:10億〜20億円(定員100名規模、地域差あり)
- 設備・備品:5,000万〜1億円
- 人件費予備(3か月分):5,000万〜7,000万円
- 合計:11〜22億円程度
月次収支モデル(例:定員100名・稼働率95%)
- 収入:4,000〜5,000万円(介護報酬+加算)
- 支出:人件費2,500〜3,500万円、食材費400〜600万円、光熱費300〜500万円、建物維持費200〜400万円
- 利益:数百万円規模(人員配置・加算状況により変動)
※特養の定員設定は制度上の上限はありませんが、実際の整備は自治体の方針に強く左右されます。多くの自治体では、地域密着型(定員29名以下)や中規模(30〜60名程度)を優先整備対象とする傾向があります。
定員100名規模の新設を検討する場合は、地域の高齢者保健福祉計画や介護保険事業計画を事前に確認し、整備対象かどうかを自治体に相談することが重要です。
開業までの具体的なステップ(チェックリスト)
- 地域ニーズ調査(自治体の高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画を確認)
- 社会福祉法人の設立認可申請
- 施設用地の確保・設計(条例基準・消防基準の確認)
- 補助金申請(国・自治体の整備補助金)
- 人員計画(介護職員・看護職員・ケアマネ等を確保)
- 施設建設・竣工検査
- 介護保険事業者指定申請(都道府県)
- 運営開始(地域包括支援センター・病院等へ周知)
よくあるQ&A(FAQ)
Q:特養は誰でも開設できますか?
A:いいえ。原則として社会福祉法人が設置主体となります。
Q:補助金はありますか?
A:はい。国庫補助や自治体の介護基盤整備補助金が活用できる場合があります。
Q:民間企業でも運営できますか?
A:直営はできませんが、社会福祉法人と連携して指定管理者方式で参画するケースはあります。
Q:黒字化までの目安は?
A:入居率の安定に1〜2年程度かかるケースが多いです。