【元管理者が解説】ショートステイの同日利用は可能?算定ルールとAI活用術
「A施設を退所して、その足でB施設に入所…これって保険算定できるの?」「ショートステイ利用日に、訪問介護も使ったらどうなる?」
介護報酬請求の現場において、「ショートステイの同日利用」は、最も判断が難しく、返戻(請求差し戻し)のリスクが高いテーマの一つです。算定ルールを誤解したまま請求し、後から「実質2日分」の算定が認められず、大きな損失に繋がるケースも少なくありません。
この記事では、介護業界で20年以上、施設管理者として複雑な算定実務に向き合ってきた私が、この「同日利用」の算定ルールを、具体的なケース別に徹底解説します。
「施設間の移動」「訪問介護との併用」「送迎加算の扱い」といった現場の疑問から、AIを活用してこれらの複雑な算定ミスを防ぐ未来の管理術まで。この記事を読めば、もう請求業務で迷いません。
【基本原則】ショートステイの算定ルールと「同日利用」

介護AI戦略室:イメージ
まず、ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)の算定ルールの基本を理解しましょう。
- 「泊まり」を1単位としてカウント:デイサービスが「日」単位なのに対し、ショートステイは「泊」単位で基本報酬が設定されています。
- 入所日と退所日の扱い:原則として、入所日と退所日も(たとえ数時間でも)それぞれ1日分の基本報酬が算定されます。
問題は、この原則が「同日」に重なった時です。介護保険制度では、「同一時間帯に複数のサービスを重複して利用することはできない」という大原則があります。この解釈が、現場を悩ませる原因です。
ケース①:「ショートステイ」から「別のショートステイ」への同日利用

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最も判断に迷うのが、やむを得ない事情で施設を“はしご”するケースです。
【状況】
A事業所を午前中に退所し、その日の午後にB事業所に(自宅へは帰らずに)入所した。
【算定の結論】
原則として、どちらか一方の事業所しか基本報酬を算定できません。
この場合、一般的には「入所」側のB事業所が基本報酬を算定し、「退所」側のA事業所は基本報酬を算定しません。(ただし、A事業所が送迎などの加算要件を満たしていれば、一部加算のみ算定できる場合があります)
もし両方の事業所が請求した場合、審査側で重複と判断され、どちらか(または両方)が返戻となります。利用者にとっては「実質2日分」の利用に見えますが、保険請求上は「1日分」として扱われる、非常に注意が必要なケースです。
(出典:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」)
【元管理者の経験談】
私が管理者だった頃、このケースでまさに返戻を経験しました。ご家族の都合で施設を移動したのですが、双方の事業所とケアマネジャーの連携が不十分で、両方が請求を上げてしまったのです。この経験から、施設間の同日移動が発生する場合は、必ず事前にケアマネジャーが中心となり、「どちらが算定するか」を明確に取り決めておくことが、トラブル回避の鉄則だと学びました。
注意!「30日ルール」との関係
この同日移動は、「連続30日ルール」のカウントにも影響します。「A施設からB施設へ1日も自宅に帰らずに移動」した場合、30日ルールの連続日数は「通算」されます。「事業所が変わったからリセット」とはなりませんので、絶対に混同しないでください。
【あわせて読みたい】
この「30日ルール」や「60日ルール」の詳細は、非常に複雑です。詳しくは、こちらの記事で徹底解説しています。
→ 【元管理者が解説】ショートステイ「30日・60日ルール」の罠。超過減算と自己負担の真実、AI管理術
ケース②:「ショートステイ利用日」と「訪問介護」の同日利用

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次に多いのが、ショートステイの入所日や退所日に、自宅で訪問介護サービスを使うケースです。
Q1. ショートステイ「入所日」に、訪問介護は使える?
A1. 可能です。ただし、時間帯が重複していなければ。
(例)午前中に自宅で訪問介護(入浴介助)を利用し、午後からショートステイに入所する。
→ この場合、訪問介護のサービス提供が、ショートステイのサービス提供開始(=施設に到着し、管理下に入った時点)より前に完了していれば、両方とも算定可能です。
Q2. ショートステイ「退所日」に、訪問介護は使える?
A2. 可能です。これも、時間帯が重複していなければ。
(例)午前中にショートステイを退所して自宅に戻り、夕方に訪問介護(夕食の準備)を利用する。
→ この場合も、ショートステイのサービス提供が完了(=自宅に送り届けた時点)した後に、訪問介護のサービスが開始されれば、両方とも算定可能です。
重要なのは、「ショートステイのサービス時間」と「訪問介護のサービス時間」が重ならないよう、ケアプランとサービス提供実績記録票に、開始・終了時間を明確に記載しておくことです。
(出典:厚生労働省「介護サービス関係 Q&A集」(平成24年4月版、最新更新版 問92))
Q3. 送迎加算はどうなる?
送迎加算(片道)は、事業所の職員が「居宅」と「事業所」の間を送迎した場合に算定できます。ショートステイの入所日に訪問介護を使った場合でも、ショートステイの職員がご自宅まで迎えに行けば、ショートステイ側で送迎加算(往路)を算定できます。
【未来の解決策】AIが「算定ミスのストレス」から現場を解放する

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ここまで読んで、「こんなの複雑すぎて管理しきれない!」と思いませんでしたか?その通りです。これらの複雑なルールを、ケアマネジャーや施設職員が手作業のExcelや紙の記録だけでミスなく管理するのは、もはや限界に来ています。
この「ヒューマンエラーが起こるべくして起こる構造」を解決するのが、AI(人工知能)を活用した介護ソフト(DX)です。
AIにできること①:算定ルールの「自動チェック」
ケアマネジャーがケアプランを作成する段階で、AIが国の最新の算定ルール(Q&Aなど)と照合します。
(AIアラート例)「このプランでは、A施設の退所日とB施設の入所日が同日になっています。重複算定のリスクがあります。算定事業所を明確にしてください。」
AIにできること②:サービス時間の「重複検知」
各事業所(ショートステイ、訪問介護)から上がってきた実績データをAIが自動で突合します。
(AIアラート例)「〇〇様:9月20日 10:00-11:00に訪問介護の実績がありますが、同日10:30にショートステイ入所の記録があります。時間が重複しています。」
AIにできること③:記録の「正確性」向上
「ショートステイからショートステイへの同日利用」など、やむを得ないイレギュラーな対応が発生した場合、その理由や経緯を記録に残すことが極めて重要です。AIの音声入力などを活用すれば、現場の職員が詳細な状況を負担なく記録に残せ、後の監査や確認にも耐えうる正確なエビデンスを確保できます。
【これからの請求業務】
AIは、面倒なルールを記憶し、ミスの可能性を指摘してくれる「完璧な事務員」として機能します。これにより、職員は複雑な算定ルールの暗記や確認作業というストレスから解放され、本来の業務であるご利用者へのケアや、より良いプランニングに時間と能力を集中させることができます。(参考:厚生労働省「介護DXの推進」)
まとめ:ルールを正しく理解し、AIで賢くリスク回避

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ショートステイの「同日利用」に関する複雑な算定ルールについて解説しました。
- ショートステイ間の同日移動:原則、どちらか一方(基本は入所側)しか算定できない。また、「30日ルール」の日数は通算される。
- 訪問介護との同日併用:入所日・退所日ともに、サービス提供時間が重複していなければ、両方算定可能。
- 最大の対策:ケアマネジャーが中心となり、関係事業所間で「誰が」「いつ」「何を」提供し、「誰が」「何を」算定するかを、必ず事前に取り決めておくこと。
- 未来の対策:AI搭載の介護ソフトを活用し、複雑な算定ルールや時間重複のチェックを自動化することが、最も確実なリスク回避策となる。
算定ミスは、事業所の経営に打撃を与えるだけでなく、利用者やご家族との信頼関係にも影響します。正しい知識と、それをサポートするテクノロジーを活用し、健全で安心な事業所運営を目指しましょう。


