【元管理者が解説】緊急ショートステイの流れ|家族がやるべき事と事業者の対応
「家族が急に入院!今日から介護をどうしよう…」「急な出張で、親を一人にできない…」
在宅介護には、このような突発的なトラブルがつきものです。そんな「いざという時」の最後の砦となるのが、緊急ショートステイです。しかし、実際にその場面に直面すると、パニックになり「どこに連絡すればいいの?」「流れは?」と不安になるものです。
この記事では、介護業界で20年以上、施設管理者として数多くの緊急受け入れを調整してきた私が、この「緊急ショートステイの流れ」を、関係者(ご家族・ケアマネ・事業所)それぞれの立場で、時系列に沿って分かりやすく徹底解説します。
利用の要件、費用、必要な書類、そしてAIを活用してこの緊急時の負担を軽減する未来の介護まで。この記事を読めば、万が一の時も、慌てず冷静に行動できるようになります。
【緊急ショートステイとは?】通常のショートステイとの決定的な違い

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まず、「緊急ショートステイ」と「通常のショートステイ」の違いを理解しましょう。
- 通常のショートステイ: 事前に計画し、ケアプランに組み込まれた利用。ご家族の旅行や休息(レスパイト)など、予定された利用が中心です。
- 緊急ショートステイ: ご家族の急病、入院、冠婚葬祭、災害など、予測不能な理由で在宅介護が困難になった際に、計画外で緊急的に利用するものです。
最大の違いは、「計画性」です。緊急時は、通常の契約やアセスメント(事前評価)を全て行う時間がないため、迅速な受け入れのために一部の手続きを簡略化・事後対応とすることが認められています。
【ご家族・ケアマネ向け】緊急ショートステイ「利用まで」の流れ

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いざという時、どう動けばいいのか。その流れを知っておくだけで、心の余裕が生まれます。
ステップ1:まずは担当ケアマネジャーに電話!
ご家族が最初にやるべきことは、事業所探しではありません。まずは担当のケアマネジャーに連絡し、「家族が入院したため、緊急でショートステイを利用したい」と伝えてください。ケアマネジャーは、介護保険サービスの司令塔です。
【元管理者の視点】
なぜケアマネジャーが先か? それは、緊急利用であっても「ケアプラン(介護サービス計画書)」が絶対に必要だからです。ケアプランがないサービスは保険適用されません。ケアマネジャーは、ご家族からの電話を受けながら、頭の中で「暫定ケアプラン」の作成と、受け入れ先事業所の選定を同時に開始します。
ステップ2:ケアマネジャーによる「受け入れ先」の確保
連絡を受けたケアマネジャーは、ご本人の状態(医療的ケアの有無、認知症の状況など)を把握した上で、受け入れ可能なショートステイ事業所に片っ端から電話をかけ、空きベッド(空床)を探します。この時、「緊急短期入所受入加算」の対象となることを伝え、事業所に迅速な対応を促します。
ステップ3:ご家族(またはケアマネ)による「必要書類」の準備
受け入れ先が見つかったら、入所に必要な最低限の書類を準備します。通常、以下のものが求められます。
- 介護保険証、負担割合証
- 健康保険証、その他医療受給者証
- 現在服用中のお薬(お薬手帳)
- (あれば)診療情報提供書(かかりつけ医)
緊急時は全てが揃わなくても、後日提出で対応してもらえることがほとんどです。まずは「お薬」だけは絶対に忘れないようにしましょう。
ステップ4:事業所による受け入れ・暫定プランでのサービス開始
ご本人が事業所に到着。事業所側は、ケアマネから受け取った暫定ケアプランと、ご本人・ご家族からの聞き取りに基づき、その日のうち(または速やかに)「短期入所生活介護計画書」を作成し、サービスを開始します。正式な契約書や詳細なアセスメントは、後日落ち着いてから行われることが多いです。
【費用と期間】緊急利用で知っておくべきこと

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Q1. 緊急ショートステイの要件は?
A. ご家族の急病、入院、死亡、冠婚葬祭、災害、出張など、真に「やむを得ない理由」であることが要件です。ケアマネジャーがその必要性を判断し、ケアプランに理由を記載します。単なる「明日から使いたい」という理由では認められません。
Q2. 料金(費用)は通常より高い?
A. はい、1日あたり数百円程度高くなります。
事業所が緊急受け入れ(原則として利用開始日の前日、前々日、当日の依頼に対応)を行うと、「緊急短期入所受入加算」が算定されます(最大7日間)。これは、急な受け入れに対応する事業所側の体制を評価する加算です。この加算分(1日90単位=1割負担で約90円/日)が、通常の利用料に上乗せされます。
(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の概要」)
Q3. 利用できる期間は?
A. まずは「やむを得ない理由」が解消されるまでの日数です。
例えば「ご家族の入院が7日間」であれば、まずは7日間が目安です。ただし、ショートステイには「連続30日ルール」や「認定期間の半分ルール」といった複雑な日数制限があります。緊急利用が長引きそうな場合は、すぐにケアマネジャーに相談し、次のプラン(在宅復帰、別の施設利用、長期入所など)を立て直す必要があります。
【事業所向け】AI・DXが実現する「断らない」緊急受け入れ体制

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緊急ショートステイは、ご家族にとっては「命綱」ですが、受け入れる事業所側にとっては「非常に負担の大きい業務」です。情報不足、人員不足の中での受け入れは、現場に多大なストレスとリスクをもたらします。
この負担を軽減し、「いつでも安全に受け入れられる体制」を作る切り札が、AI・DXの活用です。
AIにできること①:空床状況の「リアルタイム共有」
【課題】ケアマネが「空いてますか?」と10件の事業所に電話をかける間に、ご家族の不安は募ります。
【AI/DX】事業所のベッド管理システムと地域のケアマネジャーのシステムが連携。ケアマネは、PCやタブレットを開けば、管内の「今、空いているベッド」が一目瞭然になります。電話営業の時間をゼロにし、受け入れ調整のスピードを劇的に向上させます。
AIにできること②:利用者情報の「瞬時な連携」
【課題】「お薬は?」「既往歴は?」「アレルギーは?」…緊急時は、最も知りたい情報がすぐに手に入りません。
【AI/DX】ご本人の基本情報やアセスメント、過去の利用履歴などがクラウド上で一元管理されていれば、受け入れ要請と同時に、施設側は安全な受け入れに必要な最低限の情報を瞬時に確認できます。「情報がないから受け入れられない」というリスクを回避します。
AIにできること③:「暫定ケアプラン」の自動作成支援
【課題】ケアマネも施設職員も、受け入れ対応に追われ、必須書類である「ケアプラン」や「短期入所計画書」の作成が後回しになり、記録不備のリスクが高まります。
【AI/DX】AIが、ご本人の基本情報と「緊急利用」というフラグを基に、暫定的なケアプラン(例:「安全な環境の提供」「服薬管理」「バイタル測定」)の草案を自動生成。職員はそれを確認・修正するだけで、法令遵守と現場対応を両立できます。
【これからの介護連携】
AIは、緊急時の「情報不足」「時間不足」「人手不足」という3つの大きな壁を乗り越えるための強力な武器です。テクノロジーを活用し、ケアマネと事業所がシームレスに繋がることで、「断らない介護」、そして「ご家族・職員双方の負担軽減」が実現できるのです。(参考:厚生労働省「介護DXの推進」)
まとめ:いざという時のために、今日からできること

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緊急ショートステイの流れと、その未来について解説しました。
- ご家族がやるべきことは、まず「担当ケアマネジャー」に連絡すること。
- 緊急利用には「やむを得ない理由」が必要で、ケアプランが(暫定であっても)必ず作成される。
- 費用は「緊急短期入所受入加算」が加わるため、通常より少し高くなる。
- 事業所とケアマネは、日頃から「情報連携」を密にしておくことが、緊急対応の質を左右する。
- AI・DXの活用は、この緊急時の負担を軽減し、より安全で迅速な受け入れを実現する鍵となる。
いつ起こるか分からない「いざという時」。その日のために、日頃からケアマネジャーと良好な関係を築き、「万が一の時は、ここのショートステイを使いたい」という希望を共有しておくこと。それが、あなたとご家族を守るための、今日からできる最も大切な準備です。


