介護施設を変えたいときの理由・手続きとAI時代を見据えた施設選び
こんにちは。介護AI戦略室、運営者の「taka care」です。
「介護施設を変えたいけれど、本当に今の施設を退去していいのかな」「住み替えたいと思っているけれど、退去の手続きやお金のことがよく分からない」と悩んでいませんか。
介護施設の住み替えは、通常の引っ越しとは異なります。ご本人の生活環境が根本から変わるだけでなく、ご家族にとっても精神的・経済的な負担が小さくありません。現在の施設への不満だけで見切り発車してしまうと、次の施設でも同じ問題に直面するリスクがあります。
私は2005年から介護業界に入り、グループホームの介護職員・リーダーを経て、事務長、ショートステイ管理者、経営管理、さらには全国の介護施設の建物管理やDX(ICT・AI)推進まで経験してきました。現場で利用者さんと接する最前線から、施設を運営する経営側まで見てきたからこそ、「施設を変える」という決断には、多角的な視点が不可欠だと痛感しています。
介護施設を変えたい理由は、医療的ケアの必要性の変化、職員とのコミュニケーション不足、人間関係のトラブル、費用の負担増、立地、認知症の進行など、ご家庭によって千差万別です。「老健から特養へ移りたい」「認知症の親が新しい施設を嫌がっている」といった具体的な悩みも多いでしょう。
本記事では、元管理者の視点から、介護施設を変えたいときの理由の整理方法から、退去手続き、入居一時金の注意点、ケアマネジャーの引き継ぎまでを網羅的に解説します。
さらに、深刻な人手不足を迎えている現代において絶対に外せない「AI・テクノロジーを活用した新しい施設選びの基準」についてもお伝えします。
【この記事でわかること】
- 介護施設を変えたい理由の整理と、改善できる不満の見分け方
- 住み替えの手続き・退去の流れと「入居一時金(90日ルール)」の罠
- ケアマネジャー変更の有無や、老健・特養間の住み替えの考え方
- 認知症の親が施設変更を嫌がるときの対応策
- 介護人材不足の時代に必須となる「AI・ICT」を見据えた施設選び
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介護施設を変えたいと思ったら?後悔しないための事前準備

いきなり退去せず、まずは「変えたい理由」を
書き出して分類する
介護施設の住み替えを考え始めたら、感情のままに動かず、「なぜ変えたいのか」「今の施設で改善できることはないか」「次の施設に何を求めるのか」を順番に整理していくことが鉄則です。ここでは、実際に動く前に知っておくべきポイントを解説します。
1. 介護施設を変えたい理由を整理する(不満か、制度上の限界か)
介護施設を変えたいと思ったら、最初にやっていただきたいのが「変えたい理由を紙に書き出す」ことです。
「なんとなくサービスが悪くなった」「職員が忙しそうで話しかけにくい」という曖昧な状態のまま次の施設を探すと、施設選びの基準がブレてしまいます。
私が管理者としてご家族から相談を受けてきた経験上、施設を変えたい理由は大きく以下の2つに分類できます。
- 施設との話し合いや工夫で「改善できる不満」
- 施設の機能や人員基準上「どうしようもない限界」
| 主な理由 | 具体的な困りごと | 改善の可能性と確認すべきこと |
|---|---|---|
| 身体・医療的変化 | 夜間の痰吸引など医療的ケアが必要になった | 【限界の可能性大】 現在の施設の医療対応範囲と看取り実績を確認 |
| 施設・サービスへの不満 | オムツ交換が遅い、職員の言葉遣いが悪い | 【改善の可能性あり】 施設長や相談員へ具体的に相談し、指導を求める |
| 人間関係のトラブル | 他の入居者と合わない、特定の職員と合わない | 【改善の可能性あり】 フロアやユニットの変更、担当者の変更で対応可能か |
| 費用・経済面 | 月額利用料や追加サービス費が家計を圧迫している | 【限界の可能性大】 今後の見通しと、減免制度が使えないかを確認 |
| 立地・環境 | 遠くて面会に行けない、交通の便が悪い | 【限界の可能性大】 家族の通いやすさを優先し、近隣の施設を検討 |
| 認知症の進行 | 徘徊や大声があり、現在の施設で対応困難と言われた | 【限界の可能性大】 認知症ケアに特化した施設(グループホーム等)を検討 |
たとえば、「夜間に痰吸引が必要になった」という場合、看護師が24時間常駐していない施設では、どれだけ職員が親身であっても法律・制度上対応できません。これは「施設の限界」ですので、医療対応が可能な施設への住み替えが必要です。
一方、「担当職員と合わない」という理由なら、施設側に相談して担当を変えてもらうだけで解決するケースが多々あります。
「今の施設より良いところ」を探すのではなく、「今の施設で困っていることを解決できる機能を持ったところ」を探すのが、失敗しない施設選びの第一歩です。
2. 施設への不満はまず苦情・相談窓口へ
「改善できるかもしれない不満」に該当する場合は、いきなり退去を決める前に、まずは現在の施設に相談することをおすすめします。
「苦情を言うと、親がいじめられるのではないか」と心配されるご家族は非常に多いです。しかし、まともな施設であれば、ご家族からの具体的な相談は「ケアの質を向上させるためのヒント」として受け止めます。
相談先としては、担当のケアマネジャー、生活相談員、施設長が適任です。伝える際は、「いつも対応が悪い」と感情をぶつけるのではなく、「いつ・どこで・何があったのか」を事実ベースで伝えるのがコツです。
【元管理者が教える】施設へ相談するときの伝え方
- NG:「最近、職員さんが冷たい気がします。ちゃんとしてください」
- OK:「5月10日の夕食後、母がナースコールを押したのに30分以上待たされたと言っています。人員不足で大変かと思いますが、今後の対応方法を教えていただけますか?」
施設内で話し合っても誠実な対応がされない場合や、改善が見込めない場合は、市区町村の介護保険窓口や「国民健康保険団体連合会(国保連)」などに相談し、並行して住み替えの準備を進めましょう。
※ただし、身体的虐待や介護放棄(ネグレクト)が疑われる場合は、悠長に話し合っている場合ではありません。直ちに行政へ通報し、安全確保のための退去を最優先してください。
3. 介護施設の住み替え手続きと退去の流れ
住み替えを決断した場合、基本的には以下の流れで進めます。緊急時を除き、「退去が先」になることは避けてください。
① 新しい施設を探して見学する
ケアマネジャーや地域包括支援センター、紹介センターなどを活用し、条件に合う施設を探します。見学時は設備だけでなく、「職員間の言葉遣い(殺伐としていないか)」「利用者さんの表情」「夜間の人員体制」を必ずチェックしてください。
住み替え先をこれから探す方へ
住み替えを考え始めたものの、「どの地域で探せばいい?」「費用はどのくらい?」「今の親の状態で入れる施設はある?」と迷うこともありますよね。
そんなときは、希望するエリアや費用、介護度などの条件から老人ホーム・介護施設を比較できる「LIFULL介護」を使って、まず候補を整理してみるのも一つの方法です。資料請求や見学の申し込みもできますし、施設探しについて無料で相談することもできます。
※掲載情報や受け入れ条件は施設によって異なります。実際の入居可否や費用、対応可能な医療・介護サービスは各施設へご確認ください。
② 新しい施設の受け入れ可否の確認
診療情報提供書(紹介状)や健康診断書などを新しい施設へ提出し、面談を経て受け入れが可能かどうかの判定(入居審査)を受けます。
③ 現在の施設へ退去を申し出る
新しい施設の入居日が確定、または確実に見込める段階になったら、現在の施設へ退去を申し出ます。ここで注意すべきは「退去予告期間」です。契約書には「退去の1ヶ月前までに申し出ること」などと記載されており、急な退去だと違約金や翌月分の家賃が発生する場合があります。
④ 契約と情報の引き継ぎ・引っ越し
ここが非常に重要です。新しい施設へ移るのは、単なる荷物の移動ではありません。「ご本人の生活やこだわり」を引き継ぐ作業です。
医療情報だけでなく、「お茶は熱めが好き」「夕方に不安になりやすい」「この声かけをすると落ち着く」といった、書類に表れにくい生活上の配慮事項を、必ず新しい施設の職員へ伝えてください。
【注意点】見切り発車の退去はリスク大!
特養(特別養護老人ホーム)などは、申し込んでもすぐに入れるわけではありません。「今の施設が嫌だから」と先に退去してしまうと、次の行き先がなく、ご家族が一時的に自宅で重労働の介護を抱え込む「介護難民」になるリスクがあります。必ず「次を決めてから動く」を徹底してください。
4. 入居一時金の返還金トラブルを防ぐ「償却」と「90日ルール」の罠
有料老人ホームなどから住み替える際、最もトラブルになりやすいのが「お金(入居一時金・前払金)の精算」です。退去時にいくら戻ってくるのかは、契約内容によって全く異なります。
入居一時金は、「100万円払って、想定居住期間の半分で退去したから50万円戻ってくる」という単純な計算にはなりません。確認すべきは以下の3点です。
- 初期償却: 入居した瞬間に無条件で施設側の売上となる割合(例:入居一時金の20〜30%など)。
- 償却期間: 残りの金額を何年(何か月)かけて均等に償却(消費)していくか。
- 原状回復費用: 退去時のクリーニング代や、故意・過失による破損の修繕費。
また、よく話題になる「90日ルール(短期解約特例)」についても誤解が多いので注意が必要です。
これは老人福祉法に基づくもので、入居後90日以内に退去(死亡含む)した場合、施設側は入居一時金から「実際に利用した期間の家賃等の実費」と「原状回復費用」を差し引いた残額を、全額返還しなければならないというルールです。
「90日以内なら無条件で全額返ってくる」わけではなく、滞在した日割りの費用やクリーニング代はしっかり引かれますので、明細書は必ず確認してください。納得がいかない場合は、支払う前に計算根拠を施設側に説明させることが大切です。
5. 介護施設変更でケアマネジャーはどうなる?引き継ぎのコツ
「今のケアマネジャーさんが親身になってくれているので、施設を変えても担当を続けてほしい」というお声もよく聞きます。
結論から言うと、移動先の施設種別によってケアマネジャーが変わるかどうかが決まります。
「施設サービス(特養、老健、介護医療院など)」へ移る場合:
原則として、新しい施設に所属している「施設ケアマネジャー」に担当が変わります。外部の居宅ケアマネジャーが担当し続けることはできません。 「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」へ移る場合:
これらは「居宅(自宅)」という扱いになるため、現在の居宅ケアマネジャーが引き続き担当できるケースが多いです(※ただし、訪問可能なエリア内に限ります)。
ケアマネジャーが変更になる場合は、これまでのケアプランや支援の経緯をしっかり引き継いでもらうことが重要です。前任と後任のケアマネジャー同士で情報を共有するだけでなく、ご家族からも「今までどんな支援が上手くいっていたか」を新担当者に伝えることで、スムーズな生活の移行が可能になります。
計画書の連携の重要性については、以下の記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。
【元管理者が解説】ケアプラン2表とショートステイ計画書の違いは
6. 老健から特養への住み替えを考える際の注意点
介護老人保健施設(老健)から、特別養護老人ホーム(特養)への住み替えを希望するケースは非常に多いです。老健は本来「リハビリをして在宅復帰を目指す施設(中間施設)」であり、特養は「中長期的な生活の場」という役割の違いがあるためです。
ここでご家族が陥りやすい罠が、「老健にいれば、自動的に順番が来て特養に移れる」という誤解です。
特養は原則「要介護3以上」の方(要介護1・2は特例入所のみ)が対象であり、申し込み順ではなく「入所の必要性が高い人(緊急度が高い人)」から優先的に入所が決まります。そのため、待機期間が数ヶ月から数年に及ぶことも珍しくありません。
老健は原則3〜6ヶ月程度で退所判定が行われます。特養の空きが出る前に老健の退所期限が来てしまう可能性があるため、老健の支援相談員やケアマネジャーと「特養が決まるまでの間の生活場所(老健の延長、ショートステイの活用、別の有料老人ホームの一時利用など)」を並行して計画しておくことが極めて重要です。
【元管理者が解説】ケース別・介護施設を変えたいときの対応策
特養から特養への住み替えは可能か?
「今の特養の対応が悪いので、別の特養へ移りたい」というご相談です。結論から言えば、特養から特養への転園(住み替え)は制度上可能です。
ただし、特養は常に待機者がいる状態が多く、別の特養へ申し込んでもすぐに入れるわけではありません。また、入所判定委員会では「現在すでに特養に入所し、安全が確保されている」とみなされるため、自宅で介護を受けている待機者よりも優先順位が下がってしまう傾向があります。
それでも住み替えを希望する場合、まずは「なぜいまの特養ではダメなのか」を明確にしてください。例えば、医療行為(胃ろう、痰吸引、インスリン注射など)が必要になり、現在の特養の看護体制では対応できなくなった等であれば、正当な理由として次の特養の相談が進みやすくなります。
医療行為を理由とした特養の受け入れ基準については、以下に詳しくまとめています。
【元管理者が解説】特養での医療行為はどこまで可能?違法ライン
認知症の親が「施設を変えたい」「今の施設が良い」と嫌がるときの説得
認知症のご本人が「今の施設から出たくない(あるいは、頻繁に施設を変えたいと言い出す)」場合、正論で説き伏せるのは逆効果です。
ご家族が「お金が持たないから」「ここでは医療的ケアが受けられないから」と事実を伝えても、ご本人にとっては「自分の居場所を奪われる」という恐怖や不安に変換されてしまいます。
このような場合は、「説得」ではなく「納得できる理由づけ(口実)」を用意するのが現場のコツです。
例えば、「今の施設が良い」と新しい施設への移動を渋る場合、「新しくできた施設にお試しで旅行に行ってみようか」「少しの間だけ、あちらの施設で体のリハビリを手伝ってもらおう」と、一時的な移動であるかのように安心感を持たせながら環境に慣らしていくアプローチが有効です。
最終的な目標は「本人が心穏やかに生活できること」です。ケアマネジャーや施設の職員とタッグを組み、ご本人のプライドを傷つけない声かけのシナリオを作ることが成功の鍵です。
これからの施設選びは「AI・ICT活用」がカギになる

AI・ICT活用で「人にしかできないケア」の
時間を生み出している施設を選ぶ
ここまで、施設を変えるための具体的な手続きをお伝えしてきました。しかし、新しい施設を探すにあたって、最後にどうしてもお伝えしたい「これからの時代の施設選びの基準」があります。
それは、「AIやICT(情報通信技術)を導入し、職員の働きやすさを確保している施設かどうか」です。
介護人材不足の現状と、施設選びの新しい基準
日本の介護業界は、深刻な人材不足に直面しています。厚生労働省の推計によると、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員が必要になるとされています。現状維持のままでは、サービスを維持することすら困難な時代が来ています。
(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)
「職員が忙しそうで話しかけにくい」「ナースコールを押してもなかなか来てくれない」といったご家族の不満の根本原因は、この構造的な人手不足にあります。
では、どうすれば良い施設に出会えるのでしょうか。答えは、「テクノロジーを活用して、人にしかできないケアの時間を生み出している施設を選ぶこと」です。
職員の働きやすさが「ご本人の笑顔」につながる理由
介護施設での業務は、直接的な介護(食事・入浴・排泄介助など)だけではありません。膨大な手書きの介護記録や、夜間の頻繁な巡視業務などが職員の体力と精神力を削っています。
先進的な施設では、以下のような取り組みを行っています。
- AI見守りセンサーの導入:
ベッドにセンサーを設置し、ご本人の呼吸や起き上がりをスタッフルームのモニターやスマホでリアルタイムに把握。無駄な夜間巡視を減らし、転倒事故を未然に防ぎます。 - 介護記録の音声入力・AI要約:
スマートフォンに向かって話すだけでAIが記録を要約・テキスト化。残業時間を大幅に削減し、その分の時間を利用者さんとのおしゃべりやケアに充てています。
このようなAIやICTの導入に積極的な施設は、単に「最新の機械がある」というだけでなく、「経営者が職員の労働環境改善に投資している=離職率が低く、ケアの質が安定している」という証明でもあります。
施設見学に行く際は、「どんなレクリエーションがありますか?」という質問に加えて、「見守りセンサーや介護記録のシステムなどは導入されていますか?」と聞いてみてください。その回答と職員の表情を見れば、その施設が本当に利用者と向き合う余裕を持っているかどうかが分かります。
【参考記事】AI・ICT導入による介護現場の変化について
職員の負担軽減の具体策や、記録業務のAI化については以下の記事で詳しく解説しています。
介護施設を変えるという決断は、ご本人とご家族の生活をより良くするための前向きなステップです。
不満を整理し、正しい手続きを踏み、そして「時代に合ったテクノロジーを活用しているか」という新しい視点を持って、後悔のない施設選びをしてください。

