介護保険申請理由の書き方|ケアマネが教える「区分変更」を通すコツと例文
こんにちは。介護AI戦略室、運営者のtaka careです。
「介護保険の申請書をもらったけれど、理由欄に何をどこまで書けばいいのかわからない…」
これまで約20年間、ケアマネジャーや施設長として数え切れないほどの申請をサポートしてきましたが、ご家族から最も多く受けるのがこのご相談です。特に、状態が悪くなったときの「区分変更申請」や、認定調査・主治医意見書への伝え方は、少しの工夫で結果(要介護度)に大きな影響を与えます。
この記事では、審査の裏側を知る実務家の視点から、「調査員や審査会に、日々の介護の大変さが正しく伝わる申請理由の書き方」をわかりやすく解説します。(出典:厚生労働省「サービス利用までの流れ|介護保険の解説」)
- 審査員に伝わる申請理由「3つの要素」
- 「普段の様子」を正しく見せる認定調査のコツ
- 主治医意見書で失敗しないための事前メモの作り方
- 【ケース別】そのまま使える申請理由の文例(転倒・認知症など)
介護保険申請理由の書き方「最大の基本」

感情ではなく「事実」を組み立てる。
この3つのステップ(型)に沿うだけで、審査員に伝わる文章が完成します
要介護認定は、新規・更新・区分変更(状態が変わったときに見直す申請)の3つに分かれます。申請書の理由欄で最も大切なのは、単に「大変になった」「病気になった」と書くことではありません。
「何が起きて、生活がどう変わり、家族の『介護の手間』がどれだけ増えたか」を、相手が映像として思い浮かべられるように伝えることです。
病名ではなく「生活の困りごと」を書く
認定の現場(介護認定審査会)では、病名そのものよりも「その病気によって、日常生活でどれくらい介助が必要になったか」を重視します。
たとえば「脳梗塞になりました」という事実だけでなく、「立ち上がりに毎回介助が必要」「夜間のトイレ見守りが3回必要」「着替えに時間がかかる」といった具体的な生活の場面を書くことが、申請理由の中核になります。
区分変更申請理由の「3つの要素」
特に区分変更申請では、「前回と比べて何が悪化したか」を明確にする必要があります。以下の3つの要素(型)に沿って組み立てると、誰でも説得力のある文章が書けます。
【必勝】申請理由の基本の型
- 原因・きっかけ:(例)〇月〇日に転倒骨折し、退院した。
- 現在の具体的な状況:(例)室内移動やトイレに毎回付き添いが必要になった。
- 必要としている支援:(例)家族の負担が限界のため、訪問介護やデイサービスを増やしたい。
この順番で書くと、短い文字数でも状況が的確に伝わります。申請書は「作文のうまさ」を競う場ではありません。事実を淡々と、しかし具体的に書くほうが圧倒的に強いのです。
【比較】伝わりにくい書き方 vs 伝わる書き方
「前より悪くなった」という感情ではなく、「何がどう増えたか」という行動に変換しましょう。
| 弱い書き方(感情・抽象的) | 伝わりやすい書き方(行動・具体的) |
|---|---|
| 最近、歩くのが不安で大変です。 | 〇月から立ち上がりに毎回介助が必要になった。室内は転倒リスクがあり見守りが必須。 |
| 夜眠れなくて家族も疲れています。 | 夜間に3回起きてトイレ介助が必要。家族の睡眠不足が続き、負担が大きい。 |
| 認知症が進んで困っています。 | 同じ質問を1日に何度も繰り返し、夕方には外に出ようとするため、常に目離しができない。 |
認定調査と主治医意見書を「味方」につける

診察室の5分では伝わらない「夜の様子」や「トイレの苦労」は、1枚のメモが代弁してくれます
申請書を出した後は、「市区町村の調査員による訪問調査」と「主治医意見書の作成」が待っています。この2つが要介護度を決める最大のデータになります。
認定調査では「よそ行き」の姿に注意!
調査員が自宅に来ると、ご高齢者は無意識に気を張り、いつもはできないのに「自分で歩けます」「トイレも一人でいけます」と答えてしまうことが多々あります。これを私設業界では「よそ行きの姿」と呼びます。
しかし、調査の場で一時的にできたとしても、普段の生活で毎回介助しているなら、ご家族がしっかり補足しなければなりません。「今日は頑張っていますが、普段の朝の着替えは毎回手伝っています」「夜は2回呼ばれます」と、事実をベースに伝えてください。
調査員もプロですので、家族の言葉と実際の動作のズレを「特記事項」としてしっかり記録してくれます。
主治医には「1枚のメモ」を渡す
市町村から主治医へ意見書の作成依頼がいきますが、お医者様は「医療のプロ」であって「ご自宅での生活のプロ」ではありません。診察室の5分間では、家でのトイレの失敗や夜中の徘徊までは見抜けないのです。
だからこそ、ご家族から主治医へ「日頃の困りごとをまとめた1枚のメモ」を渡すことを強くおすすめします。
・夜間の様子(起きる回数、不穏の有無)
・排泄のトラブル(失禁、トイレへの移動介助)
・転倒のリスク(最近転んだ場所や回数)
・服薬の管理(飲み忘れ、自分で管理できているか)
すでにケアマネジャーがついている場合は、必ずケアマネと内容をすり合わせ、「家族・ケアマネ・主治医」の三者で情報を一致させることが認定をスムーズに進めるコツです。
スマホの音声入力(AI)で「介護メモ」を残す
申請理由や医師へのメモを作る際、「介護日誌」があると非常に役立ちます。しかし、毎日手書きでノートをつけるのは大変ですよね。
当サイトでは「記録に追われない介護」を推奨しています。ご家族も、スマホの音声入力機能やLINEの「自分だけが見るグループ」を使って、「夜中2時にトイレ介助」「18時、むせた」と、単語で音声メモを残すだけで十分です。この事実の積み重ねが、申請時の最強の武器になります。
【ケース別】そのまま使える!介護保険申請理由の文例

転倒、認知症、退院直後。
それぞれの状況に合わせた「刺さるフレーズ」を、ご自身の状況に合わせて選んでください。
実務でよく遭遇するケース別に、申請理由の文例を作成しました。ご自身の状況に合わせて(日付や回数を書き換えて)そのままお使いください。
1. 転倒・骨折による区分変更
ポイント:受傷の事実だけでなく、退院後に「どの動作」ができなくなったかを明記します。
令和〇年〇月〇日に自宅で転倒し、左大腿骨頸部骨折と診断され入院。〇月〇日に退院したが、以前のように歩けず、立ち上がりや室内移動、トイレに毎回介助が必要となった。家族の身体的負担が急増しており、現在の介護度では必要なサービス(訪問介護やリハビリ)の量が不足しているため区分変更を申請する。
2. 認知症の進行・夜間対応の増加
ポイント:「物忘れ」ではなく、夜間徘徊や妄想など、家族の目離しができなくなった事実を書きます。
以前から物忘れはあったが、先月下旬ごろから症状が進行し、夜間に2〜3回起きて室内を歩き回るようになった。また、「財布を盗まれた」等の妄想もあり、常に家族の見守りと声かけが必要。家族の睡眠不足が深刻であり、在宅生活を維持するためにデイサービスの増回やショートステイの利用が必要不可欠である。
3. 脳梗塞・肺炎など退院後の在宅復帰
ポイント:入院前は自立していた状態から、麻痺や体力低下で「何の手間が増えたか」を比較します。
〇月〇日に脳梗塞で入院し、〇月〇日に退院。右半身に麻痺が残り、食事、排泄、更衣、入浴のほぼ全ての日常生活動作において一部〜全介助を要するようになった。入院前は自立していたが、現在は日中も家族の付き添いが必須であり、必要な支援量が見合っていないため見直しを希望する。
4. パーキンソン病など進行性疾患の悪化
ポイント:日や時間帯による「波」があること、転倒リスクが高まっていることを強調します。
パーキンソン病の進行により、ここ数ヶ月で「すくみ足」がひどくなり、移乗や立ち上がりが不安定になった。特に午前中や薬効が切れた時間帯は自力での移動が難しく、転倒リスクが非常に高い。安全に在宅生活を続けるため、福祉用具の見直しと訪問介護の導入を急ぎたい。
注意点
「今はまだ家族で何とかなっているから」と遠慮して控えめに書く必要はありません。要介護認定は「今この瞬間にどれだけ介護の手間がかかっているか」を客観的に測るものです。現実の厳しさをしっかり文字に落とし込んでください。
まとめ:申請理由は「介護の手間」を伝えるラブレター

申請書は、あなたが一人で抱え込まずに「助けて」と伝えるための大切な手紙。
その先に、利用者も家族も笑える毎日が待っています。
介護保険の申請理由は、単なるお役所仕事の穴埋めではありません。
「いつ、何が起きて、今どんな介護をしていて、どれくらい家族が疲弊しているか」を、審査員やケアマネジャーに伝えるための大切なメッセージです。
完璧な文章である必要はありません。病名ではなく「生活の事実(数字や頻度)」を並べるだけで、プロには痛いほど状況が伝わります。ぜひ今回の文例や「3つの要素」を参考に、日々の介護のリアルを堂々と申請書にぶつけてください。
正確な情報は公式サイトをご確認ください。また、手続きや書き方で迷ったときは、一人で抱え込まず、地域包括支援センターや担当ケアマネジャーなどの専門家に遠慮なくご相談くださいね。
【読者限定特典】診察室で渡すだけ!「主治医へ伝える日常生活の困りごとシート」
介護保険の申請でとても重要な「主治医意見書」。しかし、数分の診察時間で「家でどれだけ介護が大変か」を口頭で伝えるのは至難の業です。
そこで、ケアマネジャーが実際に医師と連携する際に重視している「生活のリアルな困りごと」を1枚にまとめられるチェックシートを作成しました。
▼ここから下をコピーしてメモ帳などに貼り付け、印刷して主治医にお渡しください▼
【主治医の先生へ:日常生活の様子について】 介護保険(新規・区分変更)の申請にあたり、自宅での普段の様子をまとめました。意見書作成のご参考になさってください。 患者氏名:( ) 記入日:令和 年 月 日 記入者 :( )(続柄: ) ■ 1.移動と転倒について [ ] 室内を歩くとき、ふらつきや転倒の危険がある [ ] 最近( )ヶ月以内に( )回ほど転倒した [ ] 立ち上がりや車椅子への移乗に、家族の介助が必要 ■ 2.食事と服薬について [ ] 食事中にむせることが増えた(週に 回程度) [ ] 自分で食べるのが難しく、食事介助が必要 [ ] 薬の飲み忘れや飲み間違いがあり、家族の管理が必要 ■ 3.排泄と夜間の様子について(★介護負担が大きい部分です) [ ] トイレまでの移動やズボンの上げ下ろしに介助が必要 [ ] 尿や便の失敗(失禁)がある [ ] 夜間に( )回ほど起きるため、家族が付き添っている [ ] 夜間、眠らずにウロウロすることや大声を出すことがある ■ 4.認知機能・コミュニケーションについて [ ] 直前の出来事を忘れたり、同じ質問を何度も繰り返す [ ] 季節に合った服を選べない、着替え方がわからなくなる [ ] 自分のいる場所や、家族の顔(名前)がわからないことがある [ ] 「物を盗まれた」などの妄想や、急に怒り出すことがある [ ] 一人で外出すると、道に迷って帰れなくなる危険がある ■ 5.その他、家族が一番困っていること・心配なこと (例:家族が睡眠不足で倒れそう、日中ひとりにさせるのが不安 等) [ ] [ ]
【使い方のアドバイス】
すべてを完璧に埋める必要はありません。当てはまる項目の「[ ]」にチェック(✓)を入れ、( )に数字を書き込むだけで完成します。
診察室に入ったら、「先生、家での様子をメモにしてきましたので、意見書の参考にしてください」とこの紙を渡すだけでOKです。これなら「言い忘れた!」「本人が『何でも一人でできます』と強がってしまって伝えられなかった…」という失敗を確実に防ぐことができますよ。

