【例文付き】デイサービス利用状況報告書の書き方|元管理者が教えるポイントとAI活用
「利用状況報告書、何を書けばいいか分からない…」「毎回同じような内容になってしまう…」
デイサービスで働く多くの職員が、日々の「利用状況報告書」の作成に悩みを抱えています。これは、ご家族やケアマネジャーにご利用者の様子を伝える大切なツールですが、忙しい業務の中で質の高い記録を維持するのは簡単ではありません。
この記事では、介護業界で20年以上、施設管理者として数多くの報告書を指導・監修してきた私が、誰でも分かりやすく、かつ効率的に質の高い報告書を作成するための具体的な「書き方」と「例文」を徹底的に解説します。
さらに、単なる効率化にとどまらない、AIを活用して記録の質を高め、より個別性のあるケアに繋げる未来の姿までご紹介。この記事を読めば、報告書作成のストレスから解放され、自信を持って情報共有できるようになります。
【超基本】なぜ利用状況報告書は重要なのか?3つの目的

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まず、なぜこの報告書がそれほど重要なのか、その目的を再確認しましょう。単なる「作業」ではなく、明確な目的意識を持つことが、質の高い記録への第一歩です。
- ご家族への「安心」の提供:日中の活動内容、食事・入浴の状況、表情や他の利用者との関わりなどを伝えることで、離れて暮らすご家族に「今日も元気に過ごせたんだな」という安心感を届けます。
- チームケアの「羅針盤」:ケアマネジャーや看護師、リハビリ職など、多職種がご利用者の状態変化(体調、ADL、認知機能など)を正確に把握し、ケアプランの評価や見直しを行うための重要な情報源となります。
- 介護の「質」の担保と証明:どのようなケアが提供されたかを客観的に記録することで、サービスの質を担保し、万が一の事故や監査の際に適切なケアを行っていたことを証明するエビデンス(証拠)となります。
介護保険法においても、サービス提供に関する記録の作成・保存は事業者の義務とされています。(出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第百一条)
【元管理者の経験談】
私が現場にいた頃、報告書に書かれた「今日は〇〇様が好きな歌を口ずさんでいましたよ」という一文をご家族が見て、とても喜んでくださったことがありました。数字や定型文だけでなく、その人らしさが伝わる「生きた情報」を添えること。それが、報告書を単なる記録以上の価値あるものにするのです。
【項目別】そのまま使える!利用状況報告書の例文集と書き方のコツ

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「具体的にどう書けばいいの?」という声にお応えして、報告書の主要項目ごとに、そのまま使える例文と書き方のポイントを解説します。
1. バイタルサイン・健康状態
【目的】体調変化の早期発見と医療連携のため。
【書き方のコツ】測定値だけでなく、普段との比較や自覚症状も記載する。
【例文】
・体温36.5℃、血圧130/80mmHg、脈拍75回/分。平熱で安定されています。
・(変化ありの場合)午前中は微熱(37.2℃)がありましたが、水分補給と休息で午後は36.8℃に解熱。「少しだるい」との訴えありましたが、夕方には改善が見られました。引き続き要観察。
【NG例】「バイタル異常なし」→ 具体的な数値を記載しましょう。
2. 食事・水分摂取
【目的】栄養状態、嚥下機能、嗜好の変化を把握するため。
【書き方のコツ】摂取量(主食〇割、副食〇割など)に加え、食事中の様子(むせ込み、食事時間、介助の要否)も記載する。
【例文】
・昼食:主食全量、副食8割摂取。むせ込みなく、ご自身のペースで召し上がりました。水分は150ml摂取。
・(変化ありの場合)昼食:主食半分、副食3割摂取。「あまり食欲がない」との発言あり。食事中のむせ込みが2回見られたため、とろみ茶を提供。明日の食事形態について看護師と相談予定。
【NG例】「あまり食べなかった」→ 具体的な量と理由(可能性)を記載しましょう。
3. 入浴・清潔ケア
【目的】身体の清潔保持、皮膚状態の確認のため。
【書き方のコツ】入浴の有無、方法(一般浴、機械浴など)、皮膚トラブルの有無、介助時の様子を記載する。
【例文】
・午前中に一般浴にて入浴。洗身・洗髪は一部介助にて実施。皮膚に発赤や 褥瘡(じょくそう)などの異常は見られませんでした。「さっぱりした」と笑顔あり。
・(拒否の場合)入浴をお誘いしましたが、「今日は入りたくない」との意思表示があったため、清拭にて対応しました。
4. 排泄
【目的】排泄状況の把握、失禁や便秘・下痢などの早期対応のため。
【書き方のコツ】トイレ利用/おむつ交換の回数、排泄物の性状(量、色、硬さなど)、失禁の有無を記載する。
【例文】
・日中、トイレにて排尿3回あり。量は中等量、色は淡黄色で異常なし。失禁は見られませんでした。
・(変化ありの場合)午前中に下痢便が1回あり。腹痛の訴えはなし。水分補給を促し、午後からは軟便に。明日も続くようであれば看護師に報告します。
5. 日中の活動・レクリエーション
【目的】心身機能の維持・向上、他者との交流、QOL(生活の質)の把握のため。
【書き方のコツ】参加した活動内容に加え、その時の表情、発言、他の利用者との関わりなどを具体的に描写する。
【例文】
・午後の音楽レクリエーションに参加。知っている歌が流れると、手拍子をしながら楽しそうに口ずさんでいました。隣の席の〇〇様とも笑顔で会話されていました。
・(不参加の場合)体操の時間にお誘いしましたが、「今日は疲れているから休む」とのことで、フロアの椅子で見学されていました。
【NG例】「レクに参加した」→ 具体的な様子や表情を描きましょう。
6. 特記事項・申し送り事項
【目的】特に注意すべき点や、次回のケアに繋げる情報を共有するため。
【書き方のコツ】客観的な事実に基づき、簡潔に記載する。対応が必要な場合は、具体的な内容を明記する。
【例文】
・本日、右足に少しむくみが見られました。着圧ソックスの着用状況を確認してください。
・〇〇様より「来週、孫が面会に来るのが楽しみだ」とのお話がありました。次回の利用時に話題にしてみてください。
【注意点】報告書作成で守るべき3つのこと
- 客観性:「~だと思う」「~のようだ」といった推測や主観は避け、見たまま、聞いたままの事実を記録する。
- 具体性:「たくさん」「少し」ではなく、「〇割」「〇回」「〇分」など、可能な限り数値や具体的な言葉で表現する。
- プライバシー保護:報告書は個人情報。取り扱いには細心の注意を払い、決められた場所に保管し、関係者以外に見られないようにする。(参考:個人情報保護委員会)
【効率化と質向上】AIがサポートする未来の報告書作成

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「分かってはいるけど、毎日具体的に書くのは大変…」そんな現場の悩みを解決するのが、AI(人工知能)を活用した記録サポートシステムです。
- AIによる文章自動生成:職員が入力した単語や簡単なメモ(例:「食事半分」「笑顔あり」「体操参加」)をもとに、AIが上記のような自然で具体的な報告書の文章を自動で作成してくれます。職員は、それを確認・修正するだけでOK。
- AIによる変化・傾向の分析:日々の記録データをAIが分析し、「〇〇様、先週から食事摂取量が10%減少しています」「転倒リスクが高まる歩行パターンが見られます」といった、人間では気づきにくい変化の予兆を自動で検知・報告。ケアプランの見直しや事故予防に繋げます。
- AIによる記録内容のチェック:「バイタルの入力が漏れています」「専門用語が使われていますが、ご家族にも分かりますか?」など、記録の抜け漏れや分かりやすさをAIがチェックし、より質の高い報告書作成をサポートします。
【これからの報告書作成】
私が管理者だった頃、報告書の質のばらつきや作成時間の長さは常に課題でした。AIは、これらの課題を解決する強力なツールです。AIに定型的な作業を任せることで、職員はご利用者一人ひとりの「その人らしさ」を伝えるための観察や、温かい言葉を選ぶことに、より多くの時間と心を注げるようになります。テクノロジーと人の感性が融合することで、報告書はもっと価値あるものになるのです。(参考:厚生労働省「介護分野における生産性向上の取組の好事例について」)
まとめ:報告書は、利用者と未来を繋ぐ「日々の物語」

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デイサービスの利用状況報告書の書き方について、具体的な例文とAI活用を交えて解説しました。
- 報告書は、ご家族の安心、チーム連携、ケアの質向上に不可欠な重要ツール。
- 「客観性」と「具体性」を意識し、項目ごとにポイントを押さえて書くことが基本。
- 例文を参考にしつつ、ご利用者一人ひとりの「らしさ」が伝わる工夫を加える。
- AIを活用すれば、記録の負担を減らし、質を高めることができる。
- 最終的な目標は、効率化ではなく、「より良いケア」に繋げること。
利用状況報告書は、単なる日々の記録ではありません。それは、ご利用者一人ひとりの大切な一日を紡ぐ「物語」であり、ご家族や多職種、そして未来のケアへと繋いでいくための、かけがえのないバトンです。この記事が、あなたの報告書作成の一助となり、より温かく、質の高いケアの実践に繋がることを願っています。
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