【元管理者が解説】介護事業所の指定取り消しで職員はどうなる?失業リスクと身を守る方法

介護事業所の指定取り消しによる事業崩壊と失業(左側)と、AIやコンプライアンス意識による職員のキャリア保護(右側)を対比させたイラスト。 介護ICT・DX活用
介護AI戦略室:イメージ

【元管理者が解説】介護事業所の指定取り消しで職員はどうなる?失業リスクと身を守る方法

「うちの事業所、監査で指摘されたけど大丈夫?」「もし『指定取り消し』になったら、私たちの仕事はどうなるの…?」

介護事業所の指定取り消しのニュースが報じられるたび、現場で働く職員なら誰もがそんな不安を感じるのではないでしょうか。それは決して他人事ではありません。事業所の運営問題は、そこで働くあなたの生活とキャリアに直結する、非常に深刻な問題です。

この記事では、介護業界で20年以上、施設管理者として何度も行政監査や指導の現場を経験してきた私が、この最も切実な疑問に真正面からお答えします。

指定取り消しが決定した時、職員に何が起きるのか、再就職への影響は?そして、このような最悪の事態を未然に防ぐために、AIを活用した未来の対策は可能なのか。あなたの身を守るための知識を、具体的かつ分かりやすく解説します。

【結論】指定取り消しで職員はどうなる?待ち受ける3つの現実

介護事業所の指定取り消し後に職員が直面する「失業」「再就職への影響」「誠実さによる道」の3つの現実を、段階的なイラストで示した図。

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まず、最も知りたい結論からお伝えします。事業所の指定が取り消された場合、そこで働く職員には、主に以下の3つの現実が待ち受けています。

1. 原則、全員が職を失う(失業)

行政処分により会社の入口に大きな鍵がかけられ、職員全員が外で立ち尽くしている様子。指定取り消しが原則全員の失業に直結することを象徴している。

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「指定取り消し」とは、介護保険サービスを提供する事業者としての資格を剥奪される、最も重い行政処分です。これにより事業所は運営そのものができなくなるため、そこで働く職員は、原則として全員が雇用契約を継続できなくなり、職を失うことになります。これはパート・正社員の区別なく、ほぼ全ての職員に当てはまります。

2. 再就職活動への影響

再就職の面接において、前職の指定取り消しという事実が透明な壁となって、面接官との間に立ちはだかっている様子。

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次に直面するのが、再就職への影響です。もちろん、職員個人に不正への関与がなければ、法的な責任を問われることはありません。しかし、面接の場で「なぜ前の職場を辞めたのですか?」と聞かれた際に、指定取り消しの事実を説明する必要があります。

採用側によっては、「コンプライアンス意識の低い職場で働いていた」という印象を持つ可能性もゼロではありません。誠実な説明が求められる、デリケートな状況に置かれることは覚悟しておく必要があります。

3. しかし、誠実な職員には必ず道がある

過去の職場の混乱から離れ、誠実さと介護職としてのスキル(光るアイコン)を手に、明るい未来の職場へと歩みを進める一人の職員の姿。

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暗い話ばかりではありません。介護業界は深刻な人材不足であり、経験と志のある職員は常に求められています。重要なのは、指定取り消しという混乱の中で、あなたがどのような行動を取ったかです。

【元管理者の視点】
私の知人にも、不正請求で指定取り消しになったデイサービスに勤めていた介護福祉士がいます。彼は事業所が閉鎖される最後の瞬間まで、利用者様とご家族への説明や引き継ぎ業務を誠実にやり遂げました。その姿勢が次の職場の目に留まり、今ではリーダーとして活躍しています。どんな逆境でも、介護職としての誠実な姿勢は、あなたのキャリアを守ってくれます。(参考:厚生労働省 職業安定業務統計

なぜ指定取り消しは起きるのか?その原因を知ることが「身を守る」第一歩

介護事業所の土台(運営基盤)を職員が虫眼鏡で入念にチェックし、指定取り消しの原因を知ることが自身の身を守る第一歩であることを表現したイラスト。

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では、なぜこのような事態が起きてしまうのでしょうか。その原因を知ることは、あなたが働く職場が健全かどうかを見極める指標にもなります。

指定取り消しの主な原因トップ3

介護事業所の指定取り消しの三大原因「不正請求」「人員基準違反」「虚偽報告」をアイコンで示した図。

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厚生労働省の発表によると、指定取り消しの原因は主に以下の3つに集約されます。

  1. 不正請求(架空請求・水増し請求):提供していないサービスを請求したり、勤務実態のない職員を配置しているように偽って加算を請求したりする、最も悪質なケースです。
  2. 人員基準違反:法律で定められた職員(常勤換算2.5人以上など)を配置せず、長期間にわたって運営を続けるケース。
  3. 虚偽報告・虚偽答弁:行政の監査に対し、事実と異なる書類を提出したり、嘘の説明をしたりするケース。

(出典:厚生労働省「令和6年度 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料 」

「業務停止命令」との決定的な違い

行政処分における「業務停止命令」(一時停止)と「指定取り消し」(一発退場)の決定的な重さの違いを、アイコンで比較した図。

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「指定取り消し」と混同されやすいのが「業務停止命令」です。業務停止は、一定期間(例:3ヶ月間)のサービス提供を禁じる処分で、期間が明ければ事業を再開できます。比較的軽微な違反や、改善が見込める場合に下されます。一方、指定取り消しは事業再開の目途が立たない「一発退場」であり、処分としての重みが全く異なります。

【未来の対策】AIは、職員の雇用を守る「コンプライアンスの守護神」になる

AIがコンプライアンスの守護神となり、介護職員と事業所全体を不正やミスといったリスクから緑色のシールドで守っている様子。

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指定取り消しの原因のほとんどは、不正や人為的なミス、確認漏れです。これらを個人の意識だけに頼って防ぐのには限界があります。そこで今、注目されているのがAI(人工知能)を活用したコンプライアンス監視システムです。

AIは、職員の雇用とキャリアを守る「守護神」となり得ます。

AIが防ぐ3つの違反リスク

AIによる人員基準のリアルタイムチェック、不正請求パターンの検知、記録不備の自動修正促しという3つのリスク予防策を図解したイラスト。

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  • AIによる人員基準チェック:AIは、全職員のシフトデータをリアルタイムで解析し、「このままだと月末の人員基準が未達になります」といった警告を自動で発出。管理者は、違反が確定する前にシフト調整を行うことができます。
  • AIによる不正請求の検知:AIは、過去の膨大な請求データを学習しています。サービス提供記録と請求データに矛盾はないか、あり得ないパターンの加算が算定されていないかを自動でチェックし、不正やミスの疑いがある項目を管理者に知らせます。
  • AIによる記録の不備チェック:「Aさんの〇日の記録が未記入です」「このサービスの記録内容と提供時間が一致しません」など、監査で指摘されやすい記録の不備をAIが自動で検出し、担当者に修正を促します。

【これからの健全な事業所】
私が管理者だった頃は、これらのチェックを全て人間の目で行っていました。膨大な時間がかかり、見落としも常にありました。AIを活用すれば、これらのリスク管理を自動化・高度化できます。コンプライアンス遵守をAIに任せ、人間は本来の業務である「質の高いケア」に集中する。これが、職員が安心して働き続けられる、未来の事業所の姿です。参考:厚生労働省「介護分野における生産性向上の取組の好事例について」

まとめ:自分のキャリアを守るために、今できること

介護事業所の指定取り消しが、そこで働く職員に与える深刻な影響について解説しました。

  • 指定取り消しは、原則として職員全員の「失業」に直結する、非常に重い処分である。
  • 再就職に影響が出る可能性もあるが、介護業界は人材不足であり、誠実な職員には必ず次の道がある。
  • 指定取り消しの原因は「不正請求」「人員基準違反」「虚偽報告」が三大要因。これらは日々の小さなミスの積み重ねで起こる。
  • AIを活用すれば、これらの人為的なミスを自動で検知・予防し、職員が安心して働ける環境を構築できる。

この記事を読んでいるあなたがもし、ご自身の職場のコンプライアンスに少しでも不安を感じるなら、それは大切なサインかもしれません。日々の記録を正確につける、分からないことは上司に確認するなど、一職員としてできることから誠実に取り組むこと。そして、将来的にはAIのような仕組みで組織全体を守る意識を持つこと。

それが、巡り巡ってあなた自身の雇用とキャリアを守る、最も確実な方法なのです。

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